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 一方、レグルスと別れた碧はというと…。

「あの、攻撃をすり抜ける仮面野郎を倒す技、か…」

 一度は出来ないと言い切った技について、考え直していた。

「確かに奴はこの俺の手で直接倒したい。その気持ちはある。
 だが今のところ、魔法が使えるのはレグくらいしかいない。
 奴を倒すにはレグの力はどうしても必要だ…ん?」

 そう考えている中、碧は何を思ったのか、
その視線を急に車の中のブレイヴに向け始めた。

(そういえばあの小僧。レグの子ということは、
 あいつも魔法を使えるのか?
 たとえまだ使えなくても、才能はありそうだな…)

 今度ブレイヴが目を覚ました時、
父同様、魔法が使えるかどうか、試してみるか。
そう碧が考えていた時だった。

(…ムッ!殺気!)

キィィィィィィィン!

 辺りに冷たい金属音が鳴り響く!
鋭い殺気に気づいた碧は瞬時に剣を抜き、
背後からの一撃を止めたのだ!

『なっ!』

「不意打ちとは卑怯な手だな!何者だ?」

 奇襲に失敗した相手は、一旦間合いをとる。

『…よく分かったわね。流石は怪異調査員ってことかしら?』

「残念ながら、俺は怪異調査員じゃない。連れはそうだがな」

『連れ?…そう、今あいつはここには居ないのね?』

「ほう、貴様、レグのことを知っているのか」

『知っているも何も、私はあいつにペースを乱されて…っ!』

 そう言いかけて、仮面を被った相手は一旦黙り、こういい直した。

『あのレグルスという男には借りがあってね。今日はそれを返しに来たのよ』

「そのお返しが、あの化け物ってワケか?
 奴らをけしかけたのは、お前なんだろう?」

『そうよ。混乱に乗じて、命を頂戴しようと思ったんだけど、
 まさか貴方みたいな剣士がこの世界にいただなんて…予定が狂ったから、
 まずは貴方から始末することにしたの』

「簡単に言うな。お前みたいな小娘に殺される俺だと思うなよ!」

『ふふふ。遺言にしては冴えない言葉ね。
 冥土の土産に教えてあげるわ。私の名はマリーナ。
 自分を殺した相手の名前くらい知っておかないと、満足にあの世にも行けないでしょ?』

「ふん!口の減らないガキだ。
 このヒョク・スンイクに刃を向けたこと、後悔させてやるっ!」

 二人は互いに睨み合っていた。
緊迫した雰囲気が辺りを包む中、一際大きな波が押し寄せていた。
そして、その波が辺りの岩を飲み込んだその瞬間…!

「ハッ!」
『やぁっ!』

 同時に初撃を繰り出し、またも互いの武器が激突する音が響いた!

「らぁっ!」
『はぁぁぁっ!』

 続いて二撃、三撃…二人の攻撃は続く。
しかし何度か武器を交えるものの、互いにダメージを与えることが出来ない。
両者の武器は相手に当たる前に、相手の武器に弾かれるのだ。

『ふぅん、思ったよりもやるじゃない』

「お前こそ。趣味悪い仮面を被っている割には、大した奴だよ」

 そう言い合うと、再び激しい斬り合いが始まった。

「さぁこれでもくらいな!怒竜怪鳴斬!

『甘いっ!』

 碧の剣から放たれた必殺剣。
しかしマリーナは瞬時に見切り、これをかわす。

『今度は私の番ね…。
 覚悟しなさいっ、レッドバード!

「ぬ…ぐっ!」

 マリーナの両の手に備えた爪が、連続して碧をとらえる。
辛うじて直撃は避けたものの、碧の身体は幾らか爪跡によって抉られてしまう!

「ちぃっ!」

『あら?しぶといのね。
 この技を受けて生きていた人間は貴方が初めてよ』

「…そいつは光栄だな」

 互いにまだまだ余力はあるようだった。
だが現時点ではマリーナの方に分がありそうだ。

『さて…止めを刺す前に訊いておくわ。
 レグルスはどこへ行ったの?』

「…奴ならすぐに戻ってくるさ」

『あら意外ね。あっさり居場所を吐いちゃうなんて。
 死ぬ準備でも出来たのかしら?』

「ふん!もう勝った気でいやがる…。
 カン違いするな。死ぬ気がないから、素直に答えてやったんだ。
 これから俺に負ける相手にウソ言ってもしょうがないからな」

『ふん、強がっちゃって、手負いのくせに…。
 まぁいいわ。どうせ次で終いよっ!』

「どうかなっ!」

 更に剣と爪が激突する!
しかし、先ほどの負傷のせいか、一瞬碧の足元がぐらついた。

『とった!』

 そのチャンスをマリーナが見逃すはずかがなった。
マリーナの両の爪が、碧の喉元めがけて襲い掛かる!

「かかったな!俺の撒いたエサに喰らいつくとは!」

 実は碧が体勢を崩したのはワザとだった!
隙を作ってやれば、相手の次の一撃は容易に予測できる!
案の定、マリーナの一撃は非常に分かりやすいものだった。
碧はマリーナの攻撃を剣で防ぎ、
そしてそのまま、両腕に装着した爪を切断した!

『なにっ!』

「ふん!まだまだ甘い。
 これでお前の武器は使い物にならなくなったな」

『…それはお互い様じゃなくて?』

 見れば、碧の剣も刃こぼれが酷くなっていた。
度重なるマリーナの攻撃と、爪をへし折った時の負荷が相当にかかっていたのだ!

「…やるじゃないか。ただの小柄なガキじゃないってことか」

『アンタも相当の実力者ね。殺すには惜しいわ。
 でも私はアンタたちを倒さなければならない理由があるのよっ!』

「理由?よくわからんうちに殺されてたまるかっ!
 さぁ戦いの続きだ!次で決着をつけてやるっ!」

そう言って、互いに構えた時だった…。

「碧どうしたっ!そいつは何者だ?」

複数の怪物を捕獲したレグルスが戻ってきたのだった!
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